働く夫の事例

システム開発の責任者を任されたTさんの場合


Tさんがうつ病で悩み始めたのは、2年間の関連企業への出向を終えて、本社に戻った直後のことでした。
管理職として、システム開発の責任者を任されたのですが、Tさんがいない2年間に、仕事の手順はすっかり変わっていました。
前任者からの引き継ぎもなく、管理職の立場上、教えてもらうわけにもいかず、部署の中で孤立をしていきました。次第に食欲がなくなり、朝の電車で下痢を繰り返して会社を頻繁に遅刻するようになりました。
ついに胃がキリキリ痛み、下痢も治まらないようになったので、会社を1週間ほど休み、かかりつけの内科で一通り検査を受けましたが、何の異常も見つかりませんでした。無表情で口数も少なくなってきたTさんを妻が心配して、精神科にかかるよう勧めました。夫の様子がうつ病ではないかと思い始めていたのです。

「もう20年も頑張ってきたんだから、少しは休んだら?今の会社がすべてではないでしょう」という妻の言葉を聞き、Tさんはハッと我に返りました。そして、数日後にはインターネットで調べた精神科を夫婦で訪れました。
診察で、現在の状態やそれに至る経緯を話すうち、Tさんはどれだけ自分が無理をしてきたのかに気づきました。

このまま無理を続けていたら、うつ病が悪化して、自殺に追い込まれていたかもしれないと思うと、そうなる前に専門家の助けを得ることができて、本当によかったと思いました。医師に診断書をもらい、会社を3カ月間、休職することにしました。さらに、この医師は会社の産業医に連絡をとり、職場環境の改善も検討してくれるというのです。

最初は遠慮したTさんでしたが、同じ状況が続けば、また別の人が同じように苦しむことになると考え、産業医や上司にも遠慮なく協力を求めるようにしました。
休職したての頃は、外出する気力もなかったので、週に1度の通院以外は、家でゴロゴロしながら過ごしました。
SSRIという薬が処方され、1時間の心理療法を受けることにしました。3週間ほど経った頃、食欲が出てきて、妻と外食や散歩を楽しむようになりました。
結婚後、ずっと忙しかったので、夫婦でゆっくりした時間を過ごすのは実に20年ぶりのことでした。こうして、家族のありがたさを実感する機会ができたことは、Tさんにとってとても貴重なことに思えました。
予定通り、3カ月後には会社に復帰。上司がTさんの復帰しやすい環境を用意してくれたおかげで、部下も同僚も温かく迎えてくれました。


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