職場でのうつ~事例~

配置転換が原因となったAさんの場合

32歳の女性Aさん。家族は夫と子供2人(3歳と5歳)の4人暮らしです。性格は真面目で責任感が強いのですが、完全主義で融通がきかないところもあります。

クレジット会社本店の事務職として長年勤務していましたが、事務職の多くが派遣に代えられたため、Aさんは短期間の研修後、営業職へと業務が変わることになりました。
やがて、大型ショッピングセンター内の新設ショップの店長に配置転換となり、パートとアルバイトの男女7人の業務をただ一人の正社員として統括することになりました。そこで、何事も一生懸命に取り組むAさんは、部下のやる気を高め業績を回復させるため、店長として厳しく部下を指導しました。慣れない仕事で周囲に相談できる上司もおらず次第に恒常的な長時間残業となりました。

その上、部下からは
モビング(mobbing=職場における心理的ハラスメントの一種:集団での嫌がらせ)

も受け、いつも時間に追われマネジメント力不足から次第に「疲れた」、「眠れない」と夫に訴えるようになりました。
いつのまにか保育園へ通う子供の育児や家事は、ほとんど夫や実家の母親任せとなっていました。家庭での支援があったので仕事は何とか継続出来ていましたが、早く帰宅して、育児だけでも以前のペースに戻したいという気持ちが強く仕事との葛藤に悩む日々が続きました。
やがて仕事のミスが増え集中力もなくなり、家事や育児に対する不安や自責感もますます増大しました。
趣味の音楽鑑賞も楽しめず、不眠や食欲不振となり、疲れやすく抑うつ気分も強くなっていきました。
Aさんのメンタルヘルス不調に、以前から顔見知りの本店上司も気づき、産業医への相談を勧めました。

産業医と面談すると、精神科専門医の受診が必要と判断され、近くの精神科医を紹介されました。精神科の主治医から、配置転換やノルマ達成の困難、人間関係のトラブルなど職場ストレスと育児ストレスが心理的負荷となり、それが誘因となったうつ病と診断され、休職加療が必要と言われました。
自宅での休養、抗うつ剤による薬物療法、精神療法が行われました。症状は5か月で軽減しましたが、1か月半復職支援プログラム(ショートケアなど)が実施されました。復職に当たっては、主治医による復職可の診断書提出後、上司、人事労務担当者、産業保健スタッフ(産業医、産業看護職など)、精神科相談医などの総合的判断を経て、異動前と同様の本店事務職に配置転換され復職しました。復職後、勤務制限措置として、当面仕事は定時とし残業や出張は禁止され、通院加療が必要とされました。上司や同僚の支援・協力も得られ、仕事-家庭葛藤も解消されました。

真面目で几帳面なプログラマーBさんの場合

女性プログラマー(26歳)Bさんは、従業員500人規模のソフトウェア会社の優秀なプログラマーでした。性格は几帳面で責任感が強く、頼まれたら断れずについ何でも仕事を引き受けてしまうところがありました。

ある年、私事で悩みがあり、数人のグループで開発していたソフトの担当分に遅れが出始めました。毎晩11時近くまで残業し、睡眠時間を3~4時間に切詰めて仕事をしていました。
納期が迫っていることから焦りもあり、ベッドに入ってもなかなか寝つかれない日々が続きました。そんな中、同じグループ内の年上の男性社員から仕事の遅れの件で強い口調で叱責されました。これがきっかけとなって、めまい・吐き気・頭痛・眼の奥が痛い・腰痛・疲れがとれない・息苦しいなどの症状があらわれました。特に、息苦しいという症状は出勤途上に強くなり、通勤電車に乗ると息が詰まりそうで怖いと感じるほどになりました。どうにか出社して仕事をしていましたが、能率が上がらず落ち込んでいるのを上司が気づいていました。
会社ではメンタルヘルスの重要性がよく認識されていましたので、この段階で社長から嘱託産業医に相談がありました。
社長・上司との相談の結果、
1)グループのメンバーから外すこと、
2)業務を1人でできる仕事に替えること、
3)納期を気にせずにできる仕事にすること、などの対応をとりました。

また、強い責任感が災いして、仕事を放棄した形にすると却って症状の悪化を招くと考えられたため、
4)本人が同意するなら休養させる方針で臨みました。

数日後の面談で、本人は、「先日まで多忙でした。懸案だった仕事のほうは仲間に引き継いでもらい、私はそのシステムのネットワーク化に関する仕事を一人でしています。
仕事は自由裁量でできるところがあって随分楽になりましたが、相変わらず出社する時が辛い」と話していました。環境は改善されているものの症状が解消されていないため、精神科医を受診していただくことになりました。

精神科医の診断は「仮面うつ病」で抗うつ剤を処方され、1か月間休養するよう指示されました。1か月後に改めて面談した時には前回に比べて明らかに落ち着いていました。
症状の中で最も本人が辛く感じていた”息苦しい”という症状は解消していましたが、”咽喉に何かつまっているように感じる”という症状を訴えていました。その後も定期的に受診され、症状の増悪はみていません。


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